【No279】電子処方箋の導入状況及び導入費用補助率の見直しについて

 令和5年1月26日より運用開始された電子処方箋システムについては医業経営FPNews No.271でもその導入の進捗状況や普及に向けた課題等をご紹介させていただきました。

 今回はその続報として厚生労働省が発表した令和5年5月時点での導入状況等と電子処方箋管理サービス導入費用の補助率の見直しについてご案内いたします。

1.電子処方箋の導入状況について

 厚生労働省が発表した5月21日時点での電子処方箋システムの導入状況は図の通りとなります。

 利用申請済み施設のうちすでに運用を開始している施設は全体で約7.4%に留まっており、全体のうち薬局は約18.0%が運用開始をしているのに対し、病院、医科診療所及び歯科診療所で運用開始をしているのは約1.0%でその割合に大きな開きが出ています。

厚生労働省公式サイト「電子処方せん対応の医療機関・薬局についてのお知らせ」より引用

 また、厚生労働省が公開した5月21日時点でのオンライン資格確認の都道府県別導入状況によると、医療機関等向けポータルサイトにアカウント登録をした全国の医療機関及び薬局の機関数は229,489施設となっています。

(厚生労働省「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」参照)

 電子処方箋の導入に際してもこの医療機関向けポータルサイトを利用することから、現時点での電子処方箋の利用申請済みの施設数は全体の4分の1に満たないことが推測されます。

2.電子処方箋管理サービス導入費用の補助率の見直し

 厚生労働省は、電子処方箋の導入推進に向けて、電子処方箋を導入するにあたり必要となるシステム改修費用を一部補助する「医療提供体制設備整備交付金」を実施すると発表していました。

 電子処方箋管理サービスを導入する保険医療機関等が、電子処方箋管理サービスの導入に必要となるICカードリーダーなどの購入、レセプトコンピューターおよび電子カルテ等の既存システムの改修、電子処方箋の導入にあたっての職員への実地指導などに係る事業について交付されます。

 発表当初において当該補助率は、令和4年度に導入を完了した施設と比べて、令和5年度に導入完了した施設に対しては補助率が低く設定されていましたが、これについて見直しが図られ、令和4年度に導入完了した場合と同水準にまで引き上げられています。

 以前の医業経営FPNewsでもご紹介したようにシステムベンダが電子処方箋システムの開発・導入に割くリソース不足やHPKIカードの発行が遅延していること等によって、電子処方箋システムの導入を決定している医療機関等であっても、令和4年度中に電子処方箋管理サービスを導入完了をすることは困難な状況となっていましたが、補助率の見直しによって、少ない自己負担でシステム導入ができる期間が実質的に延長されることとなりました。

厚生労働省公式サイト「医療情報化支援基金の補助率の見直し」より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)