【No271】電子処方箋の導入状況について

 医業経営FPNews№222及び№249でご紹介させていただきました電子処方箋が令和5年1月26日より運用開始されました。

 運用開始より約1月の経過した2月27日に厚生労働省から電子処方箋の導入状況等についての報告が公開されましたので、電子処方箋の導入についての現況と今後の計画についてご説明します。

1.電子処方箋の導入状況について

 電子処方箋は2月19日時点で全国684施設(病院6、医科診療所38、歯科診療所8、薬局632)で運用開始されており、システム・運用面で、これまで大きなトラブルは出ていません。

 同じく2月19日時点でシステム改修の事前申請をした施設数は40,412施設(病院930、医科診療所15,580、歯科診療所8,754、薬局15,148)になっています。

 また、電子処方箋に電子署名を行うために必要なHPKIカードの発行枚数は1月末時点で約4.4万枚になります。

 一方で、現在以下のような問題点があがってきています。

 ・オンライン資格確認導入対応等でシステムベンダの逼迫が続いていることなどにより、システム改修が進んでいない

 ・電子署名に必要なHPKIカードが届いていない

 ・地域によっては、医療機関と薬局という処方箋の発行者と受け手のどちらかしか運用開始していないために、まだ利用に結びつかない(2月19日時点で同一市区町村内で、医療機関・薬局ともに少なくとも1カ所の対応施設がある地域は22地域(13都道府県)

 という状況もあり、全国的に使用可能で状態まで浸透するにはまだまだ時間を要する見込みとなります。

厚生労働省「電子処方箋の導入状況等について」参照

2.システムベンダの対応状況について

 ベンダ事業者の多くは、現状、オンライン資格確認導入対応等により、電子処方箋のシステム改修にリソースを十分に割くことが難しい状況となっています。具体的には大手ベンダでは施設導入するまでの余力がなく、中小ベンダは電子処方箋プログラム開発が未完了との回答があるようです。

 また、電子処方箋に対応できるベンダ情報が少ないとの指摘もあるため、ベンダ各社の対応状況について、今後、電子処方箋ポータルサイト等において定期的に公表していく予定をしています。

 電子処方箋ポータルサイトにおいて公表された3月14日時点における電子処方箋対応事業者一覧をリンクしていますので、ご自身の利用されているシステムベンダの対応状況についてはこちらからご確認ください。

3.HPKIカードの発行状況について

 厚生労働省は電子処方箋の導入開始を控え、昨秋よりHPKIカードの申請数の増加に伴い、各認証局に発行体制強化を依頼しているが、一部事業者から「運用開始したいが、HPKIカードが手元に届いていない」といった声もあるため、

① 各認証局における発行体制の強化

② HPKI認証局とも連携した上で、システム改修等がすでに終了し、HPKIカードがあれば運用開始可能な施設に対するカードの早期発行の仕組みの導入

③ さらに、カードレス署名の導入の促進を進めていく予定をしています。

 具体的に②については、3月よりHPKIファストトラック窓口(申請サイト)を社会保険診療報酬支払基金に設置し、既にシステム改修等が完了している事業者に対してHPKIカードの早期発行を促進する予定です。

 また、同時に③の物理的なカードを用いず、システム上の操作を行って電子署名を行う方式についても推進してく予定をしています。ただし、カードレス署名の導入は、パソコン設定に加えて、システム構成によっては、施設内のネットワーク構成変更を伴う可能性があるため、引き続き、積極的な開発をシステムベンダに対して協力を呼びかけていくこととしています。

厚生労働省「電子処方箋の導入状況等について」P3からP8より一部抜粋

4.普及に向けた今後のスケジュールについて

 厚生労働省は電子処方箋の普及に向けた今後スケジュールについて以下のようなロードマップを作成して計画を進めていく予定をしています。今後も厚生労働省及び電子処方箋ポータルサイト等で随時情報発信が行われていくことになりますので、定期的にご確認いただくことを推奨いたします。

厚生労働省「電子処方箋の導入状況等について」P11より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)