【No288】令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について

 令和5年7月28日に開催された第67回中央最低賃金審議会において、今年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられました。この目安どおりの引き上げとなれば、全国加重平均は1,002円(上昇額は41円)となり、上昇額は昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額となります。

 今回の答申は、令和5年6月30日に開催された第66回中央最低賃金審議会において厚生労働大臣より諮問を受けた後に、「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会」にて取りまとめられた「目安に関する公益委員見解」等を地方最低賃金審議会に示すものです。今後は、各地方最低賃金審議会にて、地域における賃金実態調査や審議を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定し、10月には新たな最低賃金額が適用される見通しとなっています。

厚生労働省 「令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について」参照

 医療機関には時給で働くパートタイマーの方も多数いることから、最低賃金の上昇額が過去最高と見込まれる今回の改定は、医業経営に与える影響が少なくありません。そこで、今回の医業経営FPNewsでは、先日取りまとめられた答申の内容についてご案内します。

1.最低賃金制度の概要

 医業経営FPNews No.197において詳しくご案内しておりますので、リンクよりご確認ください。

2.ランクごとの引き上げ額の目安

 今回の答申では、各都道府県の経済実態に応じて、ABCの3つのランクに分類し、引き上げ額の目安を決定しています。各ランクの引き上げ額の目安は、Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円となっており、各都道府県の分類は以下のとおりです。

厚生労働省 「令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について」参照

3.各都道府県の最低賃金額

 今回の答申はあくまでも目安の公表であり、最終的には各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなりますが、仮に目安どおりに上昇した場合の最低賃金額は以下のとおりです。

厚生労働省 「令和4年度地域別最低賃金改定状況」参照

4.さいごに

 医療機関で働くパートタイマーの方は年収制限がある場合が多く、今回の最低賃金額の上昇により、勤務時間の調整を行わなければならないケースも出てくることが予想されます。そのため、現状の人員のみではシフトを埋めることができない状況も想定されるため、10月の改定を待たずに今回の目安を基に今年度の従業員各人の収入を予測し、人員が不足する場合には早めに増員するなどの対策を講じることを検討してみてはいかがでしょうか。

 また、上記年収制限については、政府が対応策を検討していることも新聞やニュースなどにより報じられております。具体的な対応策などの情報が出てきましたら、改めて医業経営FPNewsにて取り上げてご案内する予定です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)