【No287】 ふるさと納税の次期指定に向けた見直しについて

 ふるさと納税制度は、開業医の皆様をはじめとする多くのドクターも毎年利用されており、他方で多くの自治体がその寄附の使い道として「医療・福祉」の選択肢を設定したり、直接自治体内の医療機関や医療体制の確保に対するメニューを作成したりする等、地域医療に対しても少なからず影響を持っている状況となっています。

 総務省は、令和5年6月27日付けで次期指定対象期間(令和5年10月1日から令和6年9月30日までの期間)におけるふるさと納税の指定制度の指定に係る基準について通知を行いましたのでその内容についてご案内します。

1.主な改正内容

 ① 募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄附金額の5割以下とする(募集適正基準の改正)

 ② 加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り、返礼品として認める(地場産品基準の改正)

 ③ 返礼品に附帯物をあわせて提供する場合、返礼品の価値が提供するものの価値全体の7割以上とする

 総務省公式サイト「ふるさと納税の次期指定に向けた見直しより引用及び「改正告示新旧対照表(令和5年総務省告示第244号)」参照

 これらはすべて現状において問題視されている点について是正するための改正となっています。

2.改正による影響

 次に上記の改正によって、ふるさと納税の指定を受けようとする自治体においてどのような対応をとる必要があるかについてご説明します。

 ①募集適正基準の改正

  ふるさと納税には令和元年6月1日より返礼品の調達費用を寄附額の3割以下とすることという基準があります。これとは別に「募集に要した費用の額」として、返礼品等の調達費用のほかに、返礼品等の送付に係る費用、広報に係る費用、決済等に係る費用、事務に係る費用等の合計額を寄附金額の5割以下とする基準が定められています。

  今回の改正で、「募集に要した費用の額」にワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用を含めることになりましたので、従来の「募集に要した費用の額」の減額を図る必要がある自治体が発生することが見込まれます。その結果として、返礼品の調達費用についても影響を受けることが予想されます。

「総務省告示第179号第2条第2号」参照

 ②地場産品基準の改正

  熟成や精米などの加工を必要とする食品について、従来は加工や製造の主要部分を自治体内で行っていれば返礼品として認められていましたが、今後は食品のうち熟成肉と精米についてはその原材料も同じ都道府県産であることが必要となりました。

  これによって、従来は取扱いのあった返礼品がなくなる可能性があります。

 ③返礼品に附帯物をあわせて提供する場合、返礼品の価値が提供するものの価値全体の7割以上とする基準

  「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&A(令和5年総税市第66号」の問22への回答にあるように現状では区域内で生産・製造等された返礼品と区域外で生産・製造等された返礼品をセットにしているケースが認められていますが、その中でも使用目的等において、地場産品が主たるもの、地場産品以外のものが附帯するものとなっていない組み合わせが存在しているため、今回の改正によって是正を図ることになりました。

  こちらも従来は取扱いのあった返礼品の組み合わせがなくなる可能性があります。

3.ふるさと納税の対象となる地方団体の指定の取消し

 ふるさと納税指定制度で指定を受けた自治体が、今回の改正点を含むふるさと納税指定制度に係る基準のいずれかに適合しないと認められた場合等において、総務大臣はその指定を取り消すことができます。

 総務省からふるさと納税対象団体としての指定取消処分を受けた自治体に対しては一定期間当該自治体に対してふるさと納税をすることはできなくなりますので注意が必要です。

4.ふるさと納税の返礼品の課税関係

 ふるさと納税の返礼品は、一時所得に該当します。

 一時所得は、ふるさとの返礼品のほかに、懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金、生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等も該当します。

 同じ年中にこれらの収入金額の合計額が50万円を超える場合に、超えた額について所得税の課税対象となります。

 国税庁「ふるさと納税」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係 参照

(文責:税理士法人FP総合研究所)