【No788】相続があった場合の消費税の申告等について注意点

 個人事業者又は個人事業者でない個人が、個人事業者である被相続人から事業を引き継いだ場合の消費税の注意点について、ご紹介します。

(1)被相続人の消費税の申告(準確定申告)について

①内容

 個人事業者である被相続人が死亡した場合の消費税の申告については、次の場合には、相続があった日の翌日から4月以内に相続人が被相続人の納税地の所轄税務署長に申告書を提出する必要があります。

(イ)確定申告書を提出すべき個人事業者がその課税期間の末日の翌日からその提出期限までの間にその申告書を提出しないで死亡した場合

(ロ)個人事業者が課税期間の中途に死亡した場合において、その課税期間分の消費税について確定申告書を提出しなければならない場合

②添付資料

 通常の消費税の確定申告書及び税額計算に係る付表と共に付表6の「死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書」を添付してください。

 この付表6を添付した場合には、「個人事業者の死亡届出書」の提出は不要です。

③留意点

 所得税の準確定申告と違い、現時点では電子申告による提出は認められていないため、書面による申告となります。

(2)相続があった場合の消費税の納税義務の免除の特例

 個人事業者(事業を承継するまでに、個人事業者でなかったものを含む。)が相続により被相続人の事業を引き継いだときには、次の対象年においては、消費税の納税義務は以下のとおりになります。

①相続があった年

 その年に相続があった場合において、その年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である相続人が、次の要件を満たすときは、その相続のあった日の翌日からその年の12月31日までの間におけるその相続人の消費税の納税義務は免除されません。

【要件】

 被相続人の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継したこと

②相続があった年の翌年、翌々年

 その年の前年又は前々年に相続により被相続人の事業を承継した相続人のその年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において、次の要件を満たすときは、その年におけるその相続人の消費税の納税義務は免除されません。

【要件】

 相続人の基準期間における課税売上高と被相続人の基準期間における課税売上高との合計額が1,000万円を超えること

(注)①、②の場合においても、相続人が消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者を選択している場合又は相続人の特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合はこの規定の適用はありません。

③被相続人が複数の事業場で事業を営んでいた場合の被相続人の基準期間における課税売上高の計算について

 相続人により、2以上の事業場を有する被相続人の事業を2以上の相続人が事業場ごとに分割して承継した場合には、その相続人が相続した事業場に係る部分の金額により被相続人の基準期間における課税売上高を計算します。

④未分割の期間があった場合

 相続財産の分割が実行されるまでの間は、各相続人について、納税義務の免除の特例により加味すべき金額は、被相続人の基準期間における課税売上高に法定相続分を乗じた金額となります。

 また、未分割の期間に発生した法定果実や未分割の状態で譲渡した資産の譲渡収入等は、各相続人にそれぞれ法定相続分で帰属します。

(3)相続があった年において相続人が各種規定の適用を受ける場合の届出書の提出期限

①消費税課税事業者選択届出書

(イ)相続により新たに事業を開始した場合

  その相続があった年の12月31日 

(ロ)相続前より事業を営んでいて、相続により事業用資産を引き継いだ場合

  被相続人が課税事業者を選択していたときに限り、その相続があった年の12月31日

②消費税簡易課税制度選択届出書

(イ)相続により新たに事業を開始した場合

  その相続があった年の12月31日 

(ロ)相続前より事業を営んでいて、相続により事業用資産を引き継いだ場合

  被相続人が簡易課税制度を選択し、かつ、相続が発生したことにより相続人が課税事業者となったときに限り、その相続があった年の12月31日

(文責:税理士法人FP総合研究所)