【No812】令和3年の基準地価の動向と令和3年上半期路線価の補正について

 国税庁は令和3年10月28日に、令和3年1月から6月までの相続等に適用する路線価等の補正を行わないことを発表しました。路線価等は毎年1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途に評価されるものであり、コロナ過の影響により、大幅に地価が下落した地域が確認された場合には、令和2年分と同様に路線価等の補正を行うことを検討することとしていました。

 上記の判断根拠となっているものが令和3年9月22日に国土交通省より発表された令和3年の基準地価であり、基準地価とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、基準地の毎年7月1日時点の地価について不動産鑑定士の評価を踏まえて都道府県知事が正常価格の判定をし、国土交通省が9月中頃に発表するものです。令和3年の調査対象の基準値数は、宅地が21,007地点、林地が436地点で全国の計21,443地点となっています。

 (なお、東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示区域内の12地点(宅地11地点、林地1地点)及び令和2年7月豪雨により甚大な被害を受けた熊本県においては宅地1地点で調査を休止しています。)

1.変動率

 令和元年から令和3年の基準地価を前年と比較した変動率は下記のとおりです。

2.調査結果の概要

 全国平均の地価は、全用途平均が2年連続の下落となりましたが、下落率は縮小しました。用途別では、住宅地は下落が継続していますが、下落率は縮小し、商業地は2年連続の下落となり、下落率が拡大しました。

 国土交通省は上記傾向となった要因が、住宅地については「弱い雇用・賃金情勢を背景に需要者が価格に慎重な態度となるなど下落が継続しているが、都心中心部の希少性が高い住宅地や交通利便性等に優れた住宅地では上昇が継続しており、上昇が見られる地域の範囲が拡大している」点、商業地については「コロナ過前において特に国内外の来訪客増加による店舗、ホテル需要でこれまで上昇してきた地域や飲食店が集積する地域での収益性の回復が遅れている一方、都市中心部のオフィス需要は、店舗需要と比較すると安定的に推移している」点にあると分析しています。

 三大都市圏では、全用途平均は横ばいから上昇に転じ、住宅地は下落から横ばいに転じました。商業地は9年連続の上昇となりましたが、上昇率は縮小しました。

3.全国における商業地の上昇率トップ10

 全国の商業地の上昇率上位10位のうち7地点を福岡市が占める結果となり、都道府県別における商業地上昇順位でも福岡県が第1位となりました。

4.令和3年分の路線価等の補正

 冒頭で述べましたとおり、令和3年1月から6月までの間に、路線価等が時価を上回る(大幅に地価が下落した)地域は確認されませんでしたので、同期間における相続等に適用する路線価等の補正は行われないこととなりました。

 なお、令和3年7月から12月までの路線価等の補正の要否については、今後の地価動向の状況を踏まえ、国税庁から発表が行われることとされていますので、今後の動向に注意が必要です。

(文責:税理士法人FP総合研究所)

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