【No897】居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除と住宅ローン控除の適用関係について

 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除と住宅ローン控除は、基本的に重複して適用することができないこととされています。

 また、特例適用の前後関係によっては、特例の選択替えが認められる場合と認められない場合がありますので、以下の事例で確認します。

<事例①>

 甲は、前年分の確定申告において、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除を適用していました。

 本年、住宅ローンを組んで新居を取得しましたが、新居について住宅ローン控除の適用を受けるためには、前年分の申告について、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除を適用しないこととする修正申告を行えば良いのでしょうか。

<取り扱い>

 ・前年分の申告について、修正申告することは認められません。

 ・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除を適用した前年分の申告は適正な申告であるため、国税通則法第19条第1項各号の「修正申告書の提出をすることができる事由」に該当しないためです。

 ・住宅ローン控除は、その居住の用に供した日の属する年分、その前年分もしくは前々年分の所得税について、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の適用を受けている場合には、適用することができません。(措法41㉒)

 ・前年分の修正申告を提出して、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の適用を撤回することができない以上、本年分の申告で住宅ローン控除を適用することは認められないこととなります。

<事例②>

 甲は、令和2年に住宅ローンを組んで新居を購入して居住したため、令和2年分の確定申告において住宅ローン控除を適用しました。その後、以前に住んでいた旧住宅を令和5年3月に譲渡しました。

 この場合、令和2年分から令和4年分までの所得税について、住宅ローン控除を適用しない旨の修正申告を行うことで、旧住宅の譲渡について3,000万円控除を適用することができるのでしょうか。

<取り扱い>

 ・令和2年分から令和4年分までの所得税について、住宅ローン控除を適用しない旨の修正申告を行うことで、令和5年分の所得税の申告について、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除を適用することが可能です。

 ・住宅ローン控除は、その居住の用に供した日の属する年の翌年以後3年以内(※)に、住宅ローン控除対象の家屋以外の家屋(従前に居住していた家屋)を譲渡した場合において、その譲渡について3,000万円控除の適用を受けるときは、適用することができません。(措法41㉓)

 (※)令和2年3月31日以前に旧住宅を譲渡した場合は、居住年の翌年以後2年以内。

    会計検査院の指摘により、令和2年度税制改正にて、新規住宅を取得した年から3年目においても両特例を併用できない措置が講じられました。

 ・一方で、令和5年分の所得税の確定申告期限までに、令和2年分から令和4年分までの所得税について住宅ローン控除を適用しない旨の修正申告書を提出し、かつ、当該期限内にこれらの申告書の提出により納付すべき税額を納付することにより、令和5年分の申告において、旧住宅の譲渡につき3,000万円控除を適用することが可能です。(措法41の3①)

(文責:税理士法人FP総合研究所)