【No300】「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」について

 令和5年10月20日、厚生労働省はキャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)に関する手続について公表しました。本助成金は医業経営FPNewsNo.296でご紹介しました厚生労働省が実施する年収に関する支援パッケージの一環であり、労働者の収入を増加させる取組みを行った場合、多くの医療機関が対象となります。そこで、今回の医業経営FPNewsでは、キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)についてご案内いたします。

1.制度の概要

 短時間労働者が新たに社会保険の被保険者となる場合に、社会保険料の労働者本人負担分を手当として支給することや賃上げなどにより収入を増加させる取組みを行った事業主に対して、労働者1人あたり最大50万円の助成がされます。この制度は、事業所当たりの申請人数に上限は設けられておりませんが、令和5年10月以降新たに被用者保険の要件を満たす労働者がいる場合に適用されるため、既に被用者保険が適用されている労働者は対象とならないためご注意ください。

厚生労働省「キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コース」2頁を参照

厚生労働省「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース 事業主の方向けQ&A問2-2」7頁を参照

厚生労働省「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース 事業主の方向けQ&A問7-4」23頁を参照

2.対象となる事業主

 以下の要件を満たした事業主が本制度の対象となります。

(1)雇用保険の適用事業所の事業主

(2)雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主

  ※キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任はできません。   

(3)雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主

(4)実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主

(5)キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主

厚生労働省「キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コース」12頁より引用

3.助成金の内容

 事業主や労働者の状況により様々なケースが想定されるため、社会保険適用時処遇改善コースの中に、手当等支給メニュー及び労働時間延長メニュー、またこれらを併用するメニューがあり、企業の実情に則して選択することができます。

(1)手当等支給メニュー

 事業主が労働者に社会保険を適用させる際に、「社会保険適用促進手当」の支給等により労働者の収入を増加させる場合に助成します。なお、この手当は給与・賞与とは別に支給され、新たに生じた本人負担分を上限として支給され、標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めないことができます(最大2年間の措置とされています。)

   また、標準報酬月額の算定の際に、事後的に確認ができるように、「社会保険適用促進手当」の名称を使用することとなります。

 厚生労働省「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース 事業主の方向けQ&A問6-1」17頁を参照

厚生労働省「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース 事業主の方向けQ&A問6-4」19頁を参照

厚生労働省「キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コース」3頁より引用

(2)労働時間延長メニュー

 所定労働時間の延長により社会保険を適用させる場合に事業主に対して助成します。以下の表の①~④のいずれかの取組みを行った場合に、労働者1人当たり中小企業で30万円(大企業の場合は22.5万円)を支給します。

厚生労働省「キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コース」4頁より引用

(3)併用メニュー

    ・  1年目に手当等支給メニューの1年目の取組み(賃金(標準報酬月額・標準賞与額)の 15%以上分を労働者に追加支給)を行った場合に1人あたり中小企業で 20 万円(大企業の場合は 15 万円)を支給

    ・  2年目に労働時間延長メニューにより、週所定労働時間を4時間以上延長させるか、以下の表の②~④の週所定労働時間の延長と賃金の増額を組み合わせる場合に、労働者1人あたり中小企業で 30 万円(大企業の場合は 22.5万円)を支給するものです。

厚生労働省「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース 事業主の方向けQ&A問2-3」9頁より引用

  厚生労働省「キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コース」4頁より引用

4.申請までの流れ

 キャリアアップ計画の提出を、取組み実施日の前日までに管轄労働局に提出する事が必要となります。ただし、社会保険適用時処遇改善コースでは、令和5年10月1日から令和6年1月31日までの間に手当の支給等を就業規則に規定する等の措置を講じる場合には、令和6年1月31日までにキャリアアップ計画書を管轄の労働局・ハローワークに事後提出することが可能となります。

厚生労働省「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース 事業主の方向けQ&A問2-1」6頁を参照

5.キャリアアップ助成金 各コースのご案内

 今回追加された社会保険適用時処遇改善コース以外については、医業経営FPNewsNo.263においてご案内しておりますので、併せてご確認ください。

(文責:税理士法人FP総合研究所)