【No302】標準型電子カルテについて

 厚生労働省は令和5年11月16日に標準型電子カルテについての情報を公開しました。多くの医療機関等でも導入されている電子カルテですが、未だに各メーカー毎に仕様が異なる等の課題を抱えているため、国が主導となって仕様の共通化などを議論しています。そこで今回の医業経営FPNewsでは標準型電子カルテについて説明します。

1.電子カルテ情報の標準化について

 第2回医療DX推進本部の会合において医療DXの推進に関する工程表が示されました。その中で、電子カルテ情報の標準化についても検討されています。

 ・2023年度に透析情報及びアレルギーの原因となる物質のコード情報について、2024年度に蘇生処置等の関連情報や歯科・看護等の領域における関連情報について、共有化を目指し標準規格化を目指すとしています。また2024年度中に、特に救急時に有用な情報等の拡充を進めるとともに、救急時において患者の必要な医療情報が速やかに閲覧できる仕組みを整備し、薬局との情報共有のため、必要な標準規格への対応を検討するとしています。

 ・標準型電子カルテについて、2023年度に必要な要件定義等に関する調査研究を行い、2024年度中に開発に着手する予定となっています。また、電子カルテ未導入の医療機関を含め、電子カルテ情報の共有のために必要な支援策を検討するとしています。

 ・遅くとも2030年には、概ね全ての医療機関において、必要な患者情報を共有するための電子カルテの導入を目指す。

厚生労働省「第1回 標準型電子カルテ検討技術作業班に関するアンケート調査説明資料」より引用

2.電子カルテの導入状況について

 医療機関における電子カルテの導入状況については、令和2年の調査で、一般病院で57.2%・一般診療所で49.9%となっており、一般診療所では50%を切っております。

(※1)一般病院とは、病院のうち、精神科病床のみを有する病院及び結核病床のみを有する病院を除いたものをいう。

(※2)一般診療所とは、診療所のうち歯科医業のみを行う診療所を除いたものをいう。

厚生労働省「第1回 標準型電子カルテ検討技術作業班に関するアンケート調査説明資料」より引用

3.標準型電子カルテの目的・導入対象

〈目的〉

 標準型電子カルテの構築にあたっては、

①「切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供」を実現するため、電子カルテ共有サービスを始めとした医療DXのシステム群(全国医療情報プラットフォーム)につながり、情報の共有が可能な電子カルテの構築を目指す。

②あわせて、「医療機関等の業務効率化」を実現するため、民間サービス(システム)との組み合わせが可能な可能な電子カルテの構築を目指す。

〈導入対象〉

 導入対象として、電子カルテの普及が進んでいない200床未満の中小病院または診療所としています。

厚生労働省「第1回 標準型電子カルテ検討技術作業班に関するアンケート調査説明資料」より引用

4.標準型電子カルテのシステムイメージと主な論点

 標準型電子カルテをクラウド上に配置し、電子カルテ情報共有サービスを始めとした医療DX(全国医療情報プラットフォーム)のシステム群や、民間事業者が提供するシステム群(オプション機能)とのAPI連携機能を実装すべく検討中となっています。主な項目は以下のとおりです。

〈構築に向けた主な論点〉

・システム接続方法:クラウドに配置した標準電子カルテと部門システム等(オンプレミス)との接続方式

・標準規格化:部門システム等接続する上での標準規格化の範囲や規定方式

厚生労働省「第1回 標準型電子カルテ検討技術作業班に関するアンケート調査説明資料」より引用

(文責:税理士法人FP総合研究所)