【No356】電子処方箋の現況と今後の対応について
過去複数回(医業経営FPNews№222、№249、№271、№279、№310、№334、№341)にわたってご案内してきました電子処方箋ですが、令和7年1月23日に行われた第192回社会保障審議会医療保険部会の中で現況と今後の対応について議題に挙がりましたので、今回の医業経営FPNewsではその内容についてご案内します。
1.現況について
(1)電子処方箋の普及状況
電子処方箋は令和5年1月26日より運用が開始されましたが、令和7年1月12日現在、導入している施設は全国47,681施設(22.5%)で、その内訳は病院311施設(3.9%)、医科診療所8,172施設(9.9%)、歯科診療所1,010施設(1.7%)、薬局38,188施設(63.2%)となっています。
医療DXを推進する工程表において、「電子処方箋については、概ね全国の医療機関・薬局に対し、2025年3月までに普及させる」とされていますが、これまでの導入実績が継続した場合、薬局については令和7年3月末に約80%の導入が見込まれるものの、医療機関については約10%弱に留まると見込まれています。
厚生労働省「電子処方箋の現況と今後の対応」P.5より参照
(2)医療機関において導入が進まない要因
医療機関において電子処方箋の導入が進まない要因として以下の7つが挙げられています。
①医薬品のマスタの設定等が適切に行われているかなど、安全に運用できる状態であるかが分からない。
②複数のシステム改修が断続的に必要となることによる負担が大きい。また、他の医療DXに関する開発によりシステムベンダーの体力が奪われている。
③電子処方箋の運用に必要な機能がシステムベンダーで対応していない。
④電子カルテのシステム更改や切替等によらず、導入する際の費用負担が重い。
⑤周囲の医療機関・薬局が導入していない。(導入施設数が限られ、緊要性を感じない。)
⑥患者からの要請がなく、ニーズを感じない。
⑦電子カルテを導入しておらず、電子処方箋を運用しても効率的にならない。
厚生労働省「電子処方箋の現況と今後の対応ついて」P.10より参照
2.これまでの機能拡充と新たな機能拡充について
令和5年1月の運用開始以降、医療現場からの声を踏まえながら、電子処方箋の機能拡充が実施されてきました。令和7年1月から新たな機能拡充が実施されます。
(1)これまでの機能拡充
①令和5年1月
電子処方箋の運用開始
(処方箋の作成、変更・削除、重複投薬等のチェックなど、基本的な機能を構築)
②令和5年12月
リフィル処方箋、口頭同意による重複投薬等チェック結果の閲覧、マイナンバーカードを活用した電子署名、処方箋ID検索、調剤結果ID検索といった院外処方に係る機能追加
③令和6年3月
調剤済み処方箋の保存サービス、マイナ在宅受付Webや医療扶助におけるオンライン資格確認対応に伴う機能改修
④令和6年10月
長期収載品の選定療養対応に伴う機能改修
厚生労働省「電子処方箋の現況と今後の対応ついて」P.7より参照
(2)新たな機能拡充
これまで院外処方を中心とした機能拡充が行われてきましたが、令和7年1月から一部の施設において試験的に院内処方における院内処方等の情報作成、変更・削除、重複投薬等チェックなどの基本的な機能が追加されることとなりました。
電子処方箋の院内処方に関する機能が現場で問題なく利用され、効果を発揮することを重点的に確認し、検証することを目的としています。
厚生労働省「電子処方箋の現況と今後の対応ついて」P.8より参照
3.今後の対応について
令和7年3月末時点で医療機関における導入率が約10%弱に見込まれる電子処方箋ですが、今後以下の対応が検討されています。
(1)電子処方箋を利用しやすく安全に運用できる仕組み・環境を整えつつ、導入されていない医療機関へのフォローアップを実施(医療機関の規模、診療科等のセグメントごとに導入阻害要因を分析し、必要となる施策の検討)
(2)これまでの導入策や診療報酬による対応に加え、公的病院等への導入再要請や、システムベンダーへの早期導入・開発要請、医療関係者向けの周知広報の強化、都道府県による電子処方箋の導入支援施策、医療機関内・薬局内のシステム連携推進(電子カルテ情報共有サービスの導入と併せて、医療機関の負担が小さくなる形で導入できる施策の検討)
(3)医療関係者の理解向上・活用促進に繋がるよう、早期に電子処方箋を導入した医療機関に対して、活用状況や効果についての調査を実施
厚生労働省「電子処方箋の現況と今後の対応ついて」P.13より参照
(文責:税理士法人FP総合研究所)